karariです。
帰宅したドアの前には、部屋の中にあるはずの私物が全て出され、山のように積み重ねられていた
前回の記事をお読みくださった読者様、我が目を疑った光景の予想は当たりましたか?
中途半端で終わらせてしまい、すみません🙇気力が持ちませんで💧お許しを
*補足:今では考えられませんが、当時は未成年でもアパート貸してくれるところがあったんですよね。キッチンもなくお風呂もない、ただ雨風がしのげるだけの部屋でしたけど。
続きです...
廊下に出されていた私物...
一体、何が起きているのか...
部屋の中はどうなっているのか、入ろうと鍵を開けようとするが鍵が鍵穴に入らない。何度試しても鍵が鍵穴に入らない...
そして気づいた。
ドアノブが取り替えられている...
おばあさんだ...
出ていけということか...
スクールに行っても食べてはいけない。
そんなこと辞めて、美容師になりなさい
新聞が配達された朝、早くにバイト先の喫茶店に入ると、朝刊からその紙面だけを抜き取った
バレていた
怒ってくれれば、叱ってくれたら
言い訳することも、謝ることも恨むこともできる
そんな感情を持つことさえ許さない
おばあさんは怒ることもなく、部屋の中から私物を出し、入れないようにドアノブを変えていた
仲間って。いったい...
どうやってそこにたどり着いたのか、何故、付き合っていたわけでもないK君のアパートなのか記憶にない
次のシーンには、K君のアパートにスクールの仲間が集まっている
突然寝るところがなくなり、K君を頼りにアパートに行き、困り果てたK君が仲間を呼んだと思われる
そこにはTちゃんもいた。スクールではちょっと先輩、年齢的にはちょっと年下の美人さん
何があったのか、どうしたのか...
説明できる状態ではなかった
その日から毎晩、K君のアパートに集まっては、とりとめもない話をして夜を明かしていた
それぞれがそれとなく集まりだす光景は、まるで見守り隊でもあるかのようだった
横に転がって寝る者、壁にもたれ掛かり寝る者、体操座りのまま寝る自分
朝になるとそれぞれ職場に向かう
きつい思いをさせてしまったのだなぁ...
イベントの企画もこうした仲間とだったら、新聞に載ったくらいで逃げ出したりはしなかったのかも...
みんなが仕事に出ている間、廊下に出された私物を要る物と要らない物の仕分けをし、寝るところと職を探す...
当然、喫茶店のバイトには行けない
寝るところ優先の職探し
いったい何日K君のアパートにお世話になったのか定かではない
東京で寮付きの仕事が決まった。
後に、昭和5年創業から現在まで続く優良企業だということがわかった。社員として入社出来たことは運が良かったとしか言いようがない
住むところが決まり、4回目の引っ越し
廊下に出され仕分けしていた私物「要らない物は全部処分してください」と引っ越し屋さんにお願いし、山のように積み重ねられていた私物はきれいになくなった
鍵が落ちた乾いた音
引っ越しの前日、おばあさんに宛てた手紙と鍵を持って挨拶に向かった
おばあさんから発する言葉はない。
ごめんなさいでも有難うでもない。ただ、美容師にはなれないこと、やってみたいことがあった...それだけを書いた手紙を渡したかった
おばあさんは手紙を受け取ってくれた
鍵を渡そうと差し出した。おばあさんも受け取るかのように手を出した
その手のひらに鍵を渡そうとした瞬間、おばあさんは手を引っ込め、鍵が喫茶店の床に落ち乾いた音がした
不要となった落ちた鍵を二人とも拾うことはなかった
東京へ
仲間が新幹線のホームまで見送りに来てくれた
Tちゃんは泣きながら手紙をくれた
ドアが閉まり、走り出した新幹線のデッキに立ち、Tちゃんからの手紙を読んだ
どうやら夢を叶えるため東京に行くのだと思っているらしい...
(そうじゃないんだよ。住むところがないんだよ)と手紙を読みながらボロボロと泣いていた
Tちゃんにこの事実を話せたのは、つい数年前
その後、いくつかの引っ越しがあり、現在の夫と結婚し長男が生まれたころ...
おばあさんに電話をしてみた
ご健在なのだろうか...
落ちた鍵の乾いた音が残ったままになっていて...
おばあさんは電話に出てくれ、覚えてくれていた
以前より優しい声…
結婚したこと子供が生まれたことを伝えると
「幸せで良かった」といってくれ、胸につかえていたものがスーッと落ちるように涙も一緒に流れて来た
えっ?どうしたの、幸せじゃないの?...
いえ、そうじゃなくて...
おばあさん、あの時はごめんなさい
有難うございました
電話を切っても涙は止まらず、涙と共に部屋を追い出された過去は洗い流された...
-おしまい-
捨てる神あれば拾う神あり。多くの拾う神に助けられて来ました
昭和の一コマ。拙い文にお付き合いくださりありがとうございます
引っ越しの数、間違えているかも...
ではでは、またいらして下さいね☆